完全妄想日記

妄想の世界へようこそ。

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『メガネの貴方は、オレのもの・番外編 Fin』【浩之の場合】

その頃の俺は、普通の中学2年とはちょっと違っていたのかもしれない。
物心ついた頃から女に言い寄られる日々、なかには露骨に誘ってくる人もいて【女】という存在が疎ましかった。
もちろん肉体的な欲求はあったが、精神的にはまったくといっていいほど、女には興味がなかった。

視聴覚室に入った。
黒い塊と、白い肌が目に入った。

手足を押さえつけられ、ジャージをずり下げられたその姿を見て、一瞬現実とは思えなかった。
彼女は口にタオルのような物を入れられて、声にならない声をあげながら顔を横に振り続けていた。

俺の中で、どす黒い何かが弾けた。

入り口にあった消火器を手に取り、彼女のに覆いかぶさっている黒い塊に振り下ろした。
「グエッ!」
カエルのような声をあげた黒い塊はのた打ち回り、次は彼女の手を押さえつけていた塊の顔に消火器を叩き付けた。
その時の俺の頭は自分でも驚くほど冷静で、無言で他の3人も痛めつけていった。
「やめてっ!」
まるでTVの世界のようだったその場から、いきなり現実の世界に戻った感じだった。
「・・・大丈夫か?」
大丈夫な訳ないが、他に言葉が出なかった。
「もうやめて、私は大丈夫だから・・」
「こんなもんじゃダメだ!こいつらがやった事の重大さを思い知らせてやるよ」
俺はそう言うと床に転げまわっていた塊の顔を踏みつけた。
飛び散る血液、足の裏に伝わる肉の感触、ムカムカする。
「だめっ!そんな事したらあなたが傷つく!」
最初、彼女の言っている事がよく解らなかった。
「なんで?なんで俺が傷つく?こんなヤツらに俺がやられる訳ないよ」
ガキの頃から実戦型の空手をやっていた俺は自分の力を過信し、世界で一番ケンカが強いと思っていたからだ。
「違う!こんな事したらあなたの心が傷つく!」
「俺の心?」
「暴力を振るう人間は、自分の心を傷つけているの。
暴力は憎しみを生み、その憎しみはいつかあなたに向けられる。
暴力で人を傷つければ、いつかあなたも傷つけられる。
暴力で人の心は変えられない、あなたはそんな事をしちゃいけない!」
涙でぐしゃぐしゃになった顔で必死になってそういう彼女を綺麗だと思った。
「・・・わかった、もうやめるよ」
すっかり怯えている黒い塊達は、床に這いつくばり俺のことを見上げていた。
「おい、携帯出せ」
「・・・・・・」
「また踏みつけてやろうか?」
ノロノロとした動作でそれぞれの携帯を取り出し、それを奪い取った。
「どうせ写メ撮ったりしたんだろ?」
(しまった!)という顔をしたやつらの携帯からメディアを抜き、すべて壊してやった。
最初に消火器で殴りつけてやった大きな塊に、
「今日の事は全て忘れろ、思い出したらまた俺が忘れさせてやるからな・・」
前歯を失くし鼻血を流したそいつは、ただ頭を上下に振るだけだった。
「消えろ!」
黒い塊達は転がるように部屋を出て行った。
放課後の視聴覚室は西日が指し、彼女の顔をオレンジに染めていた。
「・・・ありがとう・・・」
「いいから・・・それより服・・着ろよ」
「あっ!」
下着姿なのを忘れていたのか、慌ててジャージを着て髪を整えた。
「殴られたりしなかった?」
「・・うん」
「他に・・は?」
下着は脱がされていなかったからそれ以上の事はなかったと思うが、・・・気になっていた。
「大丈夫、ちょっと脅かされて触られた位」
「あいつら・・・」
「本当に大丈夫だから、これ以上暴力は振るわないで」
「俺の!・・先生をこんな目にあわせて・・触っただ?!」
「ちょっと待って、・・・俺の?」
口が滑った・・・。
俺は顔が赤くなるのが分かったが、彼女も気のせいか恥ずかしげだった。
「いつから私はあなたのものになったの?」
「俺のものじゃないけど・・・、好きなんだよ」
話の流れから、生まれて初めて告白してしまった。
「あの・・わたし・・いま混乱してるから・・」
「そっそうだよな、ごめん」
「わたしこそ・・・ありがとう・・・」
「いいよ・・、それよりこれからどうする?帰るなら送ってくよ」
「まだ帰れないよ、部活見なきゃ」
「でもあいつら待ち伏せしてたら、そうじゃなくてもバッタリ会ったら危ないだろ」
「・・・そうだね」
「今日は帰ったら?」
「・・・そうする」
「昇降口のところで待ってる」
「でも・・」
「待ってる」
「ありがとう」
やつらがまだ校舎にいたら危ないので、職員用更衣室まで付いて行き昇降口で待っていた。
しばらく待ち昇降口に彼女が現れたのを確認すると、ゆっくり校門に向かって歩き始めた。
一緒に歩いているところを誰かに見られたら、何を言われるか分からないからな。
彼女の家は学校の最寄り駅から5つ程行ったところだった、以前なんとなく聞いた事がこんな時に役に立つとは思ってもいなかった。
学校を出て駅まで歩いている途中、やつらに会う事は無かった。
「もう大丈夫だから・・・」
後ろから声を掛ける彼女を振り向きもせず、切符を買いホームへ向かって歩き出した。
電車の中でも会話をする訳ではなかった、彼女はショックを受けているだろうし俺は誰かに見られて彼女が困ったことになるのが嫌だった。
ホームに降りると彼女が近寄ってきて、
「付いて来て」
俺は黙って彼女の後を歩き出した。
5分位歩いただろうか、さほど大きくはないマンションの前で彼女は立ち止まった。
「ここが私の部屋」
「分かった、また明日」
「えっ?」
「じゃっ」
俺はそう言うと歩いてきた道を引き返した。
「ちょっと待って!」
「ん?」
「・・もう帰っちゃうの?」
「ああ」
「あの・・・ありがとう」
「いいよ」
俺は自然と顔がほころぶのが分かった、(この人を守りたい)と純粋に思っていたんだ。
”無償の愛”を彼女に見せる事で、肉欲だけではないという事を知って欲しかった。
自分に酔っていた。
彼女の本当の気持なんて考えていなかった。
翌朝、学校近くの駅で彼女の事を待っていた。
登校時間になり、1時間が経ち、2時間が経ったが彼女は現れなかった。
俺は反対の電車に乗り、彼女の部屋に向かった。
マンションに着くと階段で2階に駆け上がり、ドアの前に立った。
ふと見ると、ドアに手紙が差し込んであった。
嫌な予感がしたが恐る恐るその手紙を手に取り宛名を見た、
「佐々木君へ」

〜〜〜〜〜〜〜
佐々木君へ

昨日は助けてくれて本当にありがとう。

でも私は弱い人間です。
一緒にいて欲しかった。
怖かった。
寂しかった。


ごめんなさい。
〜〜〜〜〜〜〜

昨日あれだけ気丈に見えた彼女だったが、本当は俺が想像していた以上に傷ついていたんだと解った。
そして、なんで解ってあげられなかったのかと自分を責めた。
彼女はそのまま学校を辞め、部屋もいつのまにか引き払ってしまった。
後悔だけが残った。

それからの俺はというと自暴自棄になり、暴力とSEXに溺れた。
高校の時が一番酷く、自分以外の人間を人とは思わないヤツだった。

なんとか大学に入り少しは落ち着いたが、人より1年多く掛かって卒業し親父のコネでとある会社に就職した。
そして配属された部署に彼女・・いや彼はいたんだ。
(南条先生・・・)
最初に会った時、先生の名前を呼びそうになった。
彼を見れば見るほど先生に似ていた、血縁関係なのかと思った。

(もう後悔はしたくない・・・)
酔って寝てしまった彼の顔を見ながら心に誓った。

  1. 2008/03/11(火) 16:37:36|
  2. 『メガネの貴方は、オレのもの』
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